• テキストサイズ

ツンデレ王子と腹黒王子

第10章 本当は


「え…?」


本当に突然すぎて戸惑う。

俺は立ち止まり、振り返った春樹の顔を見つめた。

春樹も、黙ったまま俺を見つめ返す。


「いねぇよ、そんなの」


俺は少し視線を下に向け呟いた。

そんな俺を見て、春樹は小さくため息をつき、また真っ直ぐ見つめる。


「お前いい加減素直になれ」

「!」


その言葉にドキリとした。


「何言ってんだよ、十分素直じゃん」

「貴夜」


春樹は俺に歩み寄り、肩を掴む。


「自分の気持ちに、嘘はつくな!」


そう怒鳴ったあと、春樹は大きく深呼吸をした。


「お前、野木が好きなんだろ?」

「そ、そんなわけ…」

「見てれば分かるよ。お前の、野木を見る目は明らかに他の奴らとは違う。昼休みに、杉山晴と楽しそうに話をする野木を見て、お前いつも悲しそうな顔してる」


そこまで言ったあと、春樹は顔をうつ向かせ、肩を掴む手に力を入れた。


「俺は、そんな貴夜を見るのが辛い…」


力を緩め、顔を上げる。

その目はとても悲しそうで、泣きそうだった。


「自分の気持ちに素直になれ、嘘つくな。想いを誤魔化さず、しっかり向き合え、前に進め。じゃないと、お前が進まないと…俺も進めない…」


春樹の言葉が、心に重くのしかかる。

俺は、怖かったんだ。

自分の気持ちを認めることが。

野木のことは嫌いだった。

だから、認めたくなくて、ずっと自分の想いに見て見ぬふりをしていた。

本当は、心の奥底では気付いていたのに。

そのせいで、たくさんあいつを傷つけた。

なのにあいつは、俺のことを「好き」だと言ってくれた。

嬉しかった。

泣きそうになった。

俺はあいつに、感謝しなければならない。

伝えたいことがたくさんある。

「ありがとう」

「ごめん」

そして…。

俺は涙を流し、春樹に笑いかけた。


「春樹、ありがとう…」
/ 132ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp