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ツンデレ王子と腹黒王子

第10章 本当は


一瞬動きを止め、それから額を合わせた。


「無事でよかった」


そう呟き、俺から体を離す。

校門の方へ歩き出し、少し歩いてから俺に向き直る。


「送ってくよ、また襲われたら危険だし。姫果くんの所にも行くんだろ?」

「あ、あぁ。でも、いいのか?」

「大丈夫大丈夫。ボディガードしてやるよ」


そう言って、春樹は楽しそうに笑った。

俺も、つられて笑う。


「じゃあ行くぞ」

「…うん」


先に歩き出した春樹の背中を追いかけ、俺は駆け出した。





姫果を迎えに行き、家への道を3人で歩いた。

俺と春樹に、姫果は今日あったことを話す。


「それでね、渚くんが僕と一緒に鬼をやったんだよ」

「そっか、楽しかったんだな」


姫果の話に主に出てくる「渚くん」とは随分と仲がいいようで、両親とも仲良くさせてもらっている。

とてもいい人たちだ。

本当に楽しそうに話をする姫果を見ていると、何だか安心させられる。

いつまでも純粋でいてくれ。

そんなことを考えていると、いつの間にか家の前に着いていた。


「本当、ありがとう春樹。助かった」

「いいよお礼なんて。あ、バイトのときも迎えに行くから」

「そんな、大丈夫だよ」

「いいから。こう言う時は甘えておけ」


横で「そうだぞ」と姫果からも言われ、春樹の行為に甘えることにした。


「マジでありがとう」

「いいって。じゃ、また後でな」

「春樹お兄ちゃんばいばーい」


姫果に手を振り返し、春樹はそのまま帰って行った。

家の中に入り、姫果の着替えを手伝い、自分も着替える。

着替えている途中、自分の手首についている、縛った跡が目に入り動きを止める。

それにしても、あいつらは誰だったんだろう。

撤退命令が出たとかなんとか言ってたが、誰かが裏で糸を引いていると言うことなのだろうか。

そう言えば、野木はこのことを知っていて俺を何処かに連れて行こうとしたのかな。

今更考えても遅いが、あのときついて行けばよかったと後悔する。

野木の顔を思い出し、はっとしてすぐにそれを消す。


「もういい、あいつのことは忘れよう」


俺は自分に言い聞かせるように呟き、支度を進めた。
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