第10章 本当は
裏庭から話し声が聞こえ、何気なくそこを見る。
野木と杉山がいた。
いつもと変わらない光景なのに、何故だか異常に虚しく感じる。
俺は何がしたいんだろうか。
あいつにどうしてほしいのだろうか。
それが全く分からない。
「や………貴夜!」
「え、な、何?」
春樹の声がして、慌てて返事をする。
春樹はチラリと俺がさっきまで見ていた方を見た。
「あの2人、気になるの」
「いや、そういうのじゃないよ。あれ、そういえば会長は?」
周りを見渡しても姿が見当たらない。
春樹はため息をつき頭をかいた。
「逃げられた。彼女に呼ばれたとかで。くそ、今度奢らせる」
こう言うのを見てると、本当に仲がいいんだなと思う。
俺には幼馴染みとか、いなかったから。
だから多分、羨ましいんだな。
「話は変わるけど、貴夜最近野木と喋ってないよな」
「そ、そうかな…。気のせいだよ」
苦笑いを浮かべる。
そんな俺を見て、春樹は首をかしげた。
「まぁいいや。俺これから委員会の仕事あるからちょっと行ってくる」
「そっか、頑張れ」
手を振って走って行く春樹を見送り、俺はもう一度外を見た。
相変わらず野木と杉山がいる。
俺は思わず目を逸らし、そのまま教室へと戻った。