• テキストサイズ

ツンデレ王子と腹黒王子

第10章 本当は


7月上旬。

授業参観の日から約1ヶ月が経った。

テストも終わり、あとは夏休みを待つだけ。

昼休みに、廊下の窓際で春樹と外を眺めていた。

煩い蝉の声。

そのせいで更に暑くなる。


「あっちー…」

「言うな、もっと暑くなる」


何か冷たいモノがほしい。

何でもいいから、誰か持ってきてくれないかな。

「はぁ…」とため息をついたとき、頬にヒヤリとしたものを感じた。


「冷たっ!?」


俺がそう言って飛び退くと、クスクスと笑う声が聞こえ、その方を向く。

そこには、授業参観で会ったあの美男子がいた。


「も、もう会長!からかわないでくださいよ!」


そう、この人は、この学校の生徒会長だったのだ。

最初聞いたときはかなり驚いた。

しかも春樹と幼馴染みとかなんとか。


「ごめんごめん。はいこれ、あげるよ」


そう言って投げ渡したのは冷えたジュース。

春樹には違うものを渡すと、会長は微笑んだ。


「暑そうにしてたから買ってきてあげたよ、三好くん好きでしょ、それ」


この人は神様かなにかなのだろうか。

何だかそんなオーラを感じる。

俺はジュースのカンを開け、喉に流し込む。


「ちょっと雄人さん、俺このジュース嫌いって知ってますよね。知っててわざと買ってきたんですよね」

「えー、そうだったかなぁ」


俺の横でそんなやりとりが行われているがお構いなしに一気に飲み干した。

うまい。

こんな日だからこそ更にうまく感じる。


「会長、ありがとうございます」


口元を拭いながら言った。

会長はまた微笑み「どういたしまして」と言った。


「ちょ、雄人さん違うの買ってきてくださいよ」

「えー、面倒くさい」


俺はそんな2人のやりとりを見て笑ったあと、外に視線を向けた。

あれから野木とは言葉も交わしてないし視線も交わしてない。

俺が一方的に避けているためだろう。

だがこれでいいんだ。

これは俺のためにもなるし杉山のためにもなる。

もうこれ以上、あいつとは関わらない方が身のためだ。

だけど、すごく胸が痛い。

すごく、辛い…。
/ 132ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp