第9章 素直に
授業の後の保護者会が終わり、家路についた。
朝妃といづみは先に家に帰っているため今はいない。
小道から大通りに出て駅前を通る。
昼過ぎで休日と言うこともあってか、人が多い。
特に、カップルが多いような気がする。
俺はそんな光景を横目に見ながら歩いていた。
そしてふと、2人の男に目が止まる。
「野木と、杉山…」
楽しそうに話をする2人。
また、俺には見せない顔をしている。
ぎゅっと胸が痛んだ。
バカか、俺は。
何ちょっと傷ついてるんだよ。
もういいじゃないか。
あいつには恋人がいた。
俺は遊ばれていただけ。
それに俺も嫌だったし、いい機会じゃないか。
でも…。
「何で…」
こんなに胸が苦しいんだ。
野木に、好きだと告白された時の事を思い出す。
あの時は酷く心臓が高鳴って、煩くて、でもちょっと、嬉しいと思った。
俺は2人から目を逸らし速足で家に向かった。
楽しそうに話をするあいつらを見てから、イライラする。
俺はうつ向き加減に歩き、信号を渡った。
信号は青。
だけど俺の数十メートル先には、すごい勢いで迫ってくる大型トラックがあった。
トラック特有の走行時に出る音に気付き横を見たとき、俺は動けなくなった。