第8章 嫉妬心
つまり、それ以来男しか好きになれなくなったのか。
「16に独り暮らしして、現在に至るってわけ」
こいつには、家族がいない。
なのにこの前無神経なこと言ってしまった。
「俺、知らなかったのに…その、ごめんな、色々無神経だった」
「何言ってんだよ、お前悪くねぇし。それに、少し寂しいって思うけど、晴が色々相談乗ってくれたりして、今はそいつが家族みたいなもんだから」
杉山が…?
まぁ当然か、付き合ってるんだし。
チクリと胸が痛む。
それに、もやもやしてきた。
「なぁ、お前と杉山って…」
「あぁ、幼馴染み。昔から仲良いんだよ」
そうじゃない。
俺が聞きたいのはそんなことじゃないんだ。
でもいざ聞こうと思っても、怖くなって言うことが出来ない。
と言うか、さっきから俺どうしたんだ。
いつもの感じじゃない。
いつもなら、何とも思っていなかったはず。
俺はぎゅっと拳を握った。
「貴夜?」
「え、何…?」
顔を上げると、野木と目が合う。
野木は俺を見るなり、一瞬驚いた様な顔をした後、直ぐに真剣な表情に戻った。
そして、手が俺の頬に触れる。
ゆっくりと顔を近づけられ、俺の鼓動が早くなっていく。
俺は、目を瞑った。
「貴夜、好き…」
寸前にそう呟き、そして、キスをした。