第8章 嫉妬心
「えぇ!?何だよ急に、大丈夫か?」
思わず立ち上がり野木の顔を覗き込む。
前から思ってたけど、こいつ家族の話になるといつも悲しそうな顔をする。
過去に、何かあったのか?
「なぁ、お前、何かあったの?」
話してくれないだろうと思っていた。
自分のことをあまり話さない奴だと思っていたから。
「貴夜になら、話すよ。聞いてほしい」
いつもの自信に満ち溢れた様な声色ではなく、とても弱々しくて辛そうだった。
俺は、今こいつに出来ることが話を聞くことなのだったら、そうしてやりたいと思った。
何か、役に立ちたい。
無意識に、そう思っていた。
「分かった、聞くよ」
ぽつりぽつりと、野木は話始めた。
「俺の親の仲は、最悪だった。基本喋らないし、時々喋ったと思ったらすぐ口喧嘩になる。つまり、そこには家族の愛って言うものが存在していなかったんだ」
多分、愛されて育った俺には理解し難いものかも知れない。
家族といて息苦しいとか辛いとか思ったことがない。
でも野木は、それを毎日の様に味わっていたんだ。
そう思うだけで、胸が張り裂けそうになる。
「14歳の頃、母親が男作って何処かへ行ってしまって、父親も、これをいい機会に俺を置いて行方不明になったんだ。ひでぇ話だろ、親が聞いて呆れる」
野木は笑っているが、多分内心穏やかではないと思う。
手は震えてるし声も少し震えてる。
ただ単に、辛そうだった。
「そこから親戚たらい回しにされてた。でも少し安定したのが15歳の頃で、彼女も出来てたんだ。でもその彼女に…恥ずかしい話だけど酷い裏切られ方をされて、それ以来、女が、怖くなった」