第8章 嫉妬心
「開口一番でそりゃねぇだろ」
苦笑いを浮かべながら言う野木。
頼むから、今は帰ってくれ。
ただでさえお前の恋人に目付けられてんだ、空気読めよ。
「いいから帰れ」
俺はそう言ってドアを閉めようとしたが、野木にそれを阻止された。
「頼むよ、泊まらせて」
何で俺んちなんだ。
他にもいるだろ、友達とか、恋人、とか。
「杉山の家に行けばいいじゃないか」
「え?」
まずい、口が滑ってしまった。
気まずくなり、思わず目を逸らす。
「お前、何で晴のこと知ってるの」
何でって、そりゃそいつにお前に近づくなって言われたから。
何て言えるわけもなく。
「ちょっと、今日話したから…」
と言葉を濁した。
「ふーん。でも何でそこで晴が出てくんの」
嫌なところをついてくるな。
「ず、随分と仲が良さそうだったし…。つか、もう帰れよ……うわ!?」
ドアをもう一度閉めようとしたとき、手を引かれ外へと連れ出された。
そして、抱きしめられた。
「ちょ、野木やめて。ここ外だし…」
「昼、俺たちのこと見たんだ」
耳元で囁かれぞくぞくする。
耳はもう、本当にやめてほしい。
「どう思った、俺たちが仲良くしてるとこ見て」
「別に、何も………ひっ!」
耳を甘噛みされ声がもれる。
抵抗しなきゃ、やばい。
だめだ、流されるな。
「野木、だめ、ここ外だから…」
そう言っても、行為をなかなかやめようとしない。
「ぁ…野木…」
「下の名前で呼んで。じゃないとやめないから」
そんな無茶言うな!
何で俺がこんな奴の名前を呼ばなきゃなんないんだ。
「貴夜…」
「んっ…」
唇を重ねられ言葉が出せなくなる。
こいつ、何したいんだよ。
唇を離し見つめ合う。
「貴夜、呼んで?」
真っ直ぐ俺を見る野木。
俺は顔をうつ向かせ、頭を野木の胸にすりつけた。
そして…。
「は、は…や………」
「貴夜兄誰来たの?」