第7章 優しさ
すると野木は、俺の肌から唇を離し、俺を見つめた。
「お前この前、何でこんなことするのかって聞いたよな」
俺の頬に優しく触れ小さく呟く。
「それはな、お前の事が好きだからだよ」
「え…」
予想外の言葉に戸惑いを隠せない。
こんなことするのは、ただからかっているだけだと思っていた。
いつもなら、「急に何だよ、キモいな」ぐらい言っていたかも知れない。
だけど、今の野木の目を見たら、そんなこと言えなくなってしまった。
こいつのこの眼差しが、本気であることをものがたっている。
「どうしようもないくらい、貴夜が好きなんだ」
そう言って、俺を優しく抱きしめた。
まるで、宝物を包み込むように。
「ば、バカじゃないのか?男の俺なんか好きになってどうすんだよ」
心臓、煩い。
「そ、それに俺は、お前のこと好きじゃねぇし」
おさまれよ。
「むしろ、嫌いだから…」
「じゃあ何でこんなにドキドキしてんの?」
顔が熱くなった。
自分でも分かる、相手に分かるぐらい、ドキドキしてるってこと。
「別に、してない」
「してるよ、ちなみに俺もしてるから」
体を離し、俺の手を掴み自身の胸へと持っていく。
「ちょ…」
「ほら、してるだろ?」
少し速く大きい鼓動。
手から伝わってくるそれに合わせて、俺のも速く動く。
勘違いしたらダメだ。
この心臓の音は一時的なもの、直ぐにおさまる。
そう思ってもおさまる気配はない。
くそ、何なんだよ。
「貴夜、俺もうしたい」
「なっ…!?」
「大丈夫、優しくするから」
「そう言う問題じゃ…」
「お願い」
「………………………………分かったよ」
「本当!?」
「だけどこれだけは覚えとけ。
俺はお前が、大嫌いだ!」