第7章 優しさ
何で、こんなことに。
今、俺たち兄弟と野木で食卓を囲んでいる。
しかもいづみと姫果は完全になついてしまった。
離れろお前たち、そいつは危険だ!
何て口には出せるわけもなく、俺は無言でご飯を口に運ぶ。
「ねぇ隼人さん、今日は家に泊まってこうよ!」
突然のいづみの言葉に、思わずむせた。
「い、いづみ!?」
流石の貴文も驚いた顔をしている。
「貴夜兄いいでしょ?お願い!」
そんなキラキラした目で見ないでくれ。
と言うかまず野木の事情もあるだろうから。
「で、でもなぁいづみ、野木にも色々あるだろうし、ご両親も心配するだろうから…」
「別に親はそんなこと心配しない」
野木は薄く笑みを浮かべていた。
こいつ、これを言わせるためにいづみと姫果を手懐けたのか?
「ほら、隼人さんもこう言ってるじゃん。貴夜兄お願い…」
「うっ…」
今にも泣き出しそうな目をしているいづみ。
こんな顔されたら、もう「ダメだ」なんて言えない。
「分かったよ…」
そう呟いた時、さっきの泣き目が嘘のようにいづみははしゃぎ回った。
姫果も一緒に。
「じゃあ隼人さんは私たちの部屋で寝ようね!」
それは色々とまずいだろ。
年頃の女の子2人がいる部屋で男子高校生が一緒に寝るとかまずすぎる。
流石にそれは止めようと思い口を開きかけた時。
「ごめんね、今日は貴夜の部屋で寝るから」
と、野木はにこやかに言った。
やっと、こいつの真の目的が分かった気がする。