第6章 冷静に
俺たちにゆっくり近づく野木。
怒ってる、のか?
「何だ君は」
野木は足を止め、男を睨む。
「今すぐそいつから離れろ。殴られたくなかったらな」
だが男は退こうとはしない。
むしろ手で俺の体を触り始めた。
「んっ…!」
「この子、体のラインなぞられるの好きみたいだねぇ。いい顔して…うわっ!?」
野木は男の胸ぐらを掴み俺から引き剥がす。
そして思いっきり、殴った。
「ぐはっ!!」
男は床にたおれこむ。
「貴夜泣かせた罪は重いぞ。それから、警察呼んだから、もうすぐで着くんじゃない。逃げなくていいの?」
男は顔を青くして逃げて行った。
野木はため息をつき、俺に近づく。
上着を脱ぎ、それを着せてくれた。
「大丈夫か」
俺は頷き、溜まっている涙を拭った。
「ったく、お前も少しは抵抗しろ」
「したよ、けど、力じゃ勝てなかった」
悔しいけど、仕方ない。
俺弱いし。
「つか、何でお前ここに?」
そう問うと、野木は携帯を取り出し、その画面を俺に見せた。
そこには俺の写真があり、コメント等に『犯す』や『大好物』のような言葉があった。
「これ、さっきの集団の奴らの会話。お前を襲う計画立ててたみたいでさ、これ見つけて駆けつけたってわけ。お前に電話かけまくったのに出ねぇし」
「あれ、お前からだったのか!?」
でも、何で俺の番号知ってるんだ?
聞こうと思ったが怖くなったためやめておいた。
すると野木は俺の首筋に指先で触れた。
「跡、ついてる」
「え、うそ…」
見えないが、恐らくあのおっさんがつけたのだろう。
俺はそれを見られるのが恥ずかしくなり、手で隠した。
「そう言えばお前、俺に助け求めたよな」
ニヤニヤしながら野木が言う。
俺はあの時のことを思い出し、顔が熱くなった。
「よ、呼んでねぇよ勘違いすんな!」
「可愛い声で、確かに『野木』って叫んでたよ?」
違う、あれは違う!
ちょっと口が滑ってしまっただけだ。
そうだ、誰がこいつ何かに助けを求めるか。
そうこう考えていると、急に野木が触れるだけのキスをした。