第6章 冷静に
「んな!?」
そんな俺の反応を見て野木は嬉しそうに笑った。
「俺嬉しいな、貴夜が俺のこと頼ってくれて」
「だ、だから、お前の名前何か呼んでねぇって!つか触んな、どっか行け!あの時のこと、許してねぇんだからな!」
俺のどんな言葉にも、奴は嬉しそうに笑う。
何なんだ、何なんだこいつは!
「貴夜…」
優しく、俺の頬に手が触れる。
だめだ、流されるな、冷静になれ、俺!
だけど、野木の目を見ていたら、冷静さなどぶっ飛んでいた。
妙に鼓動が早くなる。
煩いほどに鳴っていて、奴に聞こえるのではと思ったくらいだ。
互いの唇が触れそうになった時。
「タカヤー、無事か?」
先輩の声が聞こえた。
我に返り、野木を押し退け立ち上がる。
あ、危なかった。
胸に手を置き、深呼吸をする。
丁度先輩がやってきて、俺に駆け寄った。
「タカヤ、悪かったな、危険な目に合わせてしまって。大丈夫か、何もされてないか?」
「大丈夫です」
俺の体にペタペタと触ってきて、少しくすぐったい。
俺がもう一度「大丈夫ですから」と言うと、先輩はホッと息をついた。
そして後ろに立っている野木に視線を移し、お辞儀をした。
「ウチのタカヤ助けてくれて、ありがとうございます。2人は、知り合いなんだよね?」
「はい、同じクラスの者です」
「じゃあ丁度よかった、こいつ家まで送ってってくれるか?夜道にタカヤ1人じゃ危険だし」
え、何言ってんの?
何でこいつが俺を家まで送ってく流れになってるんだ?
「ちょ、先輩、俺1人で大丈夫ですから…」
「分かりました送ってきます」
おい!
勝手に言うなこの変態野郎!
野木を睨むが奴はそれをスルー。
先輩は「よろしくな」と手を振って何処かへ行ってしまった。
何で、こんなことに…。