第6章 冷静に
「細い体…いいねぇ、全てにおいて好みだ」
体のラインをなぞられ、ぞくぞくする。
何で、男にばっかりこんなこと…。
嫌だよ、離せよおっさん。
もがき、男の腕から抜け出そうとする。
「君、力弱いねぇ。そんなんじゃすぐ襲われちゃうよ?」
つか、何で1人もホールの人来ねぇんだよ。
誰か来て、早く、誰か、助けてくれ。
自然と、涙が零れた。
男はそれを見て、興奮したように息を荒くする。
そして、俺をソファへと押し倒した。
「な、何すんだ離せ、退け!」
足をばたつかせる。
だが足を絡められ、更には俺の両手を頭上にまとめ押さえ込んだ。
いよいよ、本当にヤバい。
だが感情的になるな、俺。
冷静に、冷静に…。
「おいあんた、こんなことして、警察に捕まるのも時間の問題だぞ」
「あぁ、そんな心配はいらない。あっちの方で僕の仲間が店員を押さえ込んでいるから」
そういうことか。
つまり全員捕まってるってことか、畜生。
どうりで誰も来ないと思った。
「しかし、君の泣き顔はかなりそそるねぇ」
男はそう呟き、俺の首筋に舌を這わせる。
「や、めろ…」
誰か、早く!
「野木…!」
そう、いつの間にか叫んでた。
「呼んだ?」
横から声が聞こえ、振り向く。
そこに立っていたのは、凄い形相をした野木だった。