第6章 冷静に
「貴夜兄、いる?」
ドアの向こうから、控え目な声が聞こえた。
「朝妃か、どうした?」
ベッドから降り、ドアを開ける。
朝妃を中へと促し、とりあえず椅子に座らせた。
「あのね、金曜日は貴夜兄忙しそうで言い出せなかったんだけど、次の土曜日、授業参観があるんだ」
そう言い、朝妃は持っていた紙を俺に手渡した。
そこには授業参観のことについて書かれており、最後の文になるべく来てほしいと書かれていた。
壁にかかっているカレンダーに視線を移す。
その日は、バイトは入ってるけど夜だし、日中は特に予定も入っていない。
「大丈夫、行けるよ。朝妃があるってことはいづみもあるんだな」
そう言うと、朝妃は目を輝かせ頷いた。
大人に紛れて行くのは少し抵抗はあるが、そんな眼差しを受けたら行かざるおえない。
朝妃は「ありがとう」と満面の笑みで言って部屋を出て行った。
些細なことであんなに喜ばれてしまったら、もう何も言えないな。
机の上に紙を置き、再びベッドに倒れこんだ。
そしてすぐに、眠りに落ちた。