第6章 冷静に
駅にに着き、お互い少し離れてホームに立っていた。
今の時刻は8時半。
もうすぐで電車が来る筈だ。
空を見上げると、雲ひとつない晴天だった。
「なぁ、貴夜」
野木に呼ばれ、視線だけを向ける。
「体、大丈夫か」
「…別に」
俺の素っ気ない態度を見て、怒っていることを察したのか、それ以上は何も言ってこなかった。
「ただいま」
家の玄関を開け、中に呼びかける。
電車では特に何事もなく、野木と別れさっさと家に帰って来た。
「あ、お帰り貴夜兄」
リビングから貴文が顔を出す。
「悪いな、急に家空けて」
「いいよいいよ。たまには何処かでゆっくりするのも悪くないしね」
まぁゆっくりなど出来なかったが。
昨夜のことを思い出し、体が火照り始めた。
触られたところが、まだ熱を持っているように熱くなる。
し、しっかりしろ、俺。
冷静に、と考えても、体の熱はおさまらない。
俺は風呂場に駆け込み、服を脱ぎ捨てシャワーを浴びた。
冷たい水がかかる。
だけど今はそれが丁度いい。
あのときの光景が頭をよぎる。
思い出すな、思い出すな。
自分にそう言い聞かせ、火照る体を冷たい水で引かせていった。