第4章 初めて
電車内は生憎の満員。
俺は、満員電車は嫌いだ。
息苦しいし狭いし暑いし。
いいこと何てない。
車体が揺れ、人の波が押し寄せてくる。
「わっ!」
「三好!」
野木が俺の腕を掴もうとしたが、それは叶わず、あっという間に壁際までおいやられてしまった。
が、好都合だ。
野木から離れられた。
このまま逃げられるかも知れない。
ちょっと満員電車に感謝だ。
ほっと息をついたその時。
「っ!」
けつを触られる感触がした。
一瞬、荷物か何かが当たったのだろうと思ったが、一向にその行為は収まらない。
ちょ、ちょっと待て。
もしかしてこれって、ち、痴漢!?
そろりと顔だけを後ろに向ける。
目が合ったのは、息を荒くしたおっさん。
ど、どうすればいい?
とりあえず叫ぶか?
いやいや待て、男に痴漢されましたって叫んだら俺が恥ずかしくて死ぬ。
我慢するしかないか。
どうせ飽きてすぐやめるだろ。
何て、甘い考えだった。
次第に男の手は俺の前の方へと伸びて行き、ズボンの上から俺のそれに触れた。