第3章 ばれた
見間違えかと思い目を擦るが野木隼人の姿は消えない。
やばいところで見つかってしまった。
俺はまだ仕事の服装で、言い逃れなど出来る状況ではない。
「三好くん、ここで何してるの?」
「えっと、その…」
野木隼人の低く冷たい声が耳に届いた。
背中に悪寒がはしる。
「バイト、だよね。うちの学校バイト禁止って知ってるよね」
「知ってる、けど…」
思わず視線を逸らした。
「学校に報告って事でいいのかな」
「それはダメだ!」
真っ直ぐ彼を見つめる。
野木隼人も、目を逸らさず俺を見ている。
「うちは、下に兄弟4人いるんだ。親は5年前に死んだし、親戚に迷惑もかけたくないから、俺が1人で家庭支えてるんだよ。親戚から生活費とか送られてくるけどそれじゃ足りないんだ、金が必要なんだよ」
本当は事情何て話したくない。
けど、バイト辞めたくないから、話さざるおえなかった。
野木隼人は、表情をぴくりとも動かさず俺の話に耳を傾けていた。
そして小さく、ため息をついた。
「どんな事情があろうと、ルールはルール。学校に報告させてもらうよ」
「なっ!?待ってくれよ!バイト辞めたくないんだよ」
俺は、去ろうとする野木隼人の腕を掴んだ。
何か、何か説得する方法はないのか。
俺は考えを振り絞って、苦し紛れに叫んだ。
「お前の言うこと何でも聞くから、だから言わないでくれ!」
こんなこと言わなければよかったと、俺はこの時後悔した。