第3章 ばれた
「何でも…?」
野木隼人は、少し眉を潜めた。
暫しの沈黙が流れる。
やっぱりダメか。
そう思い始めたとき、野木隼人が口を開いた。
「本当に何でも聞くんだな?」
「え、あ、あぁ」
雰囲気が、変わった?
それに、目付きも。
野木隼人の目に、怪しい色が宿る。
また背中に悪寒がはしった。
「分かった、じゃあそれで手を打とう。その変わり、絶対俺の言うこと聞くんだぞ」
野木隼人は俺の手を振り払い、帰って行った。
奴の姿が見えなくなると、俺は膝から座り込んだ。
まずい奴に、目を付けられたかも知れない。
さっきの目には優しさなど感じられなかった。
泣きそうになるのを堪えながらゆっくり立ち上がる。
「早く、帰ろう…」
今は、とても家がこいしい。
もう寝ているだろうけど、家の空気だけでも吸いたい。
誰かに、甘えたい気分だ。
まぁでも…
「甘える相手も、いねぇんだけどな」
俺は自嘲的に笑った。