第12章 番外編【貴夜に出会うまで】
「今日からこのクラスの仲間になる野木隼人くんです」
2学期から親戚の世話になり始めた。
ずっと友達だった奴とも離ればなれになってしまった。
本当は、転校なんて嫌なのに…。
何故ここで、両親を思い出す。
もう何ヵ月も会っていないのに、顔と声は鮮明に思い出せる。
どんな人だったのかも、どんな喋り方だったのかも、全部。
忘れようとしているのに、そう強く願う程に、あの2人のことを思い出す。
何故だろうか。
「野木くん、どうしたの?」
先生の言葉に我に返る。
「すみません、ぼーっとしてました」
それから先生の指示に従い席についた。
自然とこちらに視線が向き、何だか居心地が悪い。
隣の席の奴に話かけられ、とりあえず意気投合はした。
休み時間のときもクラスメイトに囲まれ、身動きがとれない。
特に女子にはまとわりつかれ鬱陶しい。
早く、1日終われ…。
「ただいま…」
「お帰り、隼人くん」
これには、慣れない。
いつもは「お帰り」なんて言ってくれなかったから、今は少し戸惑っている。
でもそれ以上に、嬉しかった。
母親に言ってもらえたら、もっと、嬉しかったかも知れない。
だけどもう、きっと会えないから、想うだけ無駄だよな。