第12章 番外編【貴夜に出会うまで】
中学校に入学して数週間。
「ただいま…」
家に入ると、いつもの喧嘩の声が聞こえた。
「分かるものか、お前の言うことなんか」
「何で分からないの…はぁ、もういい。私出掛けて来ます」
母親の声が聞こえ、リビングから出てきた。
母親は俺に気付くも、無視をして俺の横を通り過ぎる。
「お帰り」の一言もないのか。
まぁいつものことだから、どうってこともないが。
俺は靴を脱ぎ部屋へと向かった。
部屋に入り、鞄を置きベッドへと倒れ込む。
何でこんなことになったんだ。
一体何処で何を間違えた。
俺が何をしたと言うんだ。
…この世界は、本当に不公平に出来てる。
何故俺は、あの親の間に産まれた。
それが不思議で堪らない。
あ、そう言えば、母さん化粧してた。
香水も、いいのをしてた気がする。
「男か…」
多分そうだ。
ここ最近出掛けることも多くなってるし、帰って来るのも夜遅い。
恐らくそれは、父親も気付いているだろう。
そこをあえて何も言わないということは、どうでもいいってことなのか。
「…」
何だか、泣けてくる。