第11章 番外編【おばあさんの家】
「貴文、起きろ」
体を揺すられ目が覚める。
目を開けると、貴夜兄の顔があった。
「おはよう、貴文」
「ん…おはよう」
体を起こし全身を伸ばす。
「着替えて、早く来いよ。もうすぐで朝ごはん出来るから」
俺は周りを見渡し、俺が最後まで寝ていたことに気がついた。
立ち上がり、自分の鞄を漁り服を引っ張り出す。
さっさと着替え、皆がいる方へと向かった。
「いただきまーす」
テーブルに並んでいる、なんとも美味しそうなおかずに箸を伸ばす。
「美味しい…」
思わずそう呟いてしまう程に美味しかった。
「あぁこらいづみ、ゆっくり食べろ」
むせるいづみに水を渡し背中をさする貴夜兄。
「貴夜、あーんってして」
「嫌だ」
「否定早すぎ」
貴夜兄と隼人さんの茶番も、これはこれで面白い。
「貴夜酷いから貴文くんにあーんってしてもらう」
「えっ」
隼人さんは俺に寄り、必要以上に近づく。
苦笑いしか浮かばない。
「貴文から離れろ!」
隼人さんを俺から引き剥がし、ため息をつく。
おばあさんはその光景を見て、嬉しそうに笑っていた。
やっぱりこの人、知ってるんだ。
何故知っているのか、疑問に思ったが、今は黙っておこう。
いつかまた、ここに来れるだろうから、その時に聞けばいい。
その時はたくさん、おばあさんと話をしよう。
おばあさんには、長生きしてもらわないと。
ご飯を口に運び、そんなことを思った。