第11章 番外編【おばあさんの家】
電車が来るのが早いせいで、朝ごはんを食べた後、直ぐに出発しなければならない。
俺たちは準備をして外に出た。
皆でおばあさんにお礼を言い、駅へと向かった。
楽しかった、少しの間だったけれど。
また来たい。
そう思える場所は初めてだった。
「貴文大丈夫か、体調悪くないか」
貴夜兄がそう言う。
確かに暑い。
けど不思議と、平気だ。
俺は笑顔を見せ、「大丈夫」と呟いた。
貴夜兄は安心した様に笑い、はしゃぎ回る姫果の方へと行った。
「何か貴文くん、吹っ切れたみたいだね」
隼人さんが小さな声で呟く。
本当にこの人は、何でもお見通しなんだな。
俺は雲ひとつない空を見上げ薄く笑んだ。
「ここは、いいところですね」
隼人さんは一瞬キョトンとしたが、吹き出した。
「あの…」
「あぁ、ごめんごめん。…君たち兄弟にとってここは、色々と気付かされるところなんだね。朝妃ちゃんも、もう悩んではないみたいだ」
朝妃に目を向けると、スッキリした様な顔をしていて驚いた。
そして、おばあさんと2人で話込んでいる光景を思い出す。
あの時に、何かあったんだな。
「まぁここは俺にとっても思い出深い場所だからな。貴夜と結ばれた場所だから…」
その話、今ので何回目だろうか。
と言うか、あれは結ばれたって言わないと思う。
でもきっと、凄く嬉しかったんだろうな。
何だかんだ、ラブラブだし。
幸せオーラが出まくっててちょっと鬱陶しいけど、それはそれでいいか。
貴夜兄が幸せなら俺もって言うのはちょっと大袈裟だけど、喜ばしいことではある。
俺も、一緒にいて幸せって思える人に出会えるだろうか。
いや、世界は広いんだ。
いつかきっと…。
俺も。
【END】