第11章 番外編【おばあさんの家】
「な、何ですか」
俺がそう言うと、隼人さんはニヤリと笑い顔を離した。
「いや、やっぱり兄弟皆貴夜に似てるなって思って。特に目元とかさ。貴文くんは貴夜の可愛さを抜いた感じだな」
何だか、貴夜兄のことを知りつくしている感じが怖い。
「この前、ご両親の写真見たよ。どっちも優しそうで羨ましかった」
俺は、5年前に死んだ親のことを思い出し、笑みをもらした。
本当に、優しい人たちだった。
母は元々体が弱く、5人も子どもを産めたのはキセキに等しい。
まぁ最後には死んでしまったが。
父は突然重い病気にかかってしまって、手術すれば治ると言われていたが、当然そんなお金は何処にもない。
借金をしてでも手術を受けるべきだと貴夜兄は言ったが、父はそれを受け入れなかった。
多分、負担をかけさせたくなかったのだろう。
親戚にも、家族にも。
2人とも、俺たちのために命を落としたと言っても過言じゃない。
思い出は、うっすらとしか覚えてないけど、貴夜兄曰く、幸せそうだったと言っていた。
「俺も、優しい親がほしかったなー」
まるで、優しい親を持っていない口振りだ。
隼人さんは、寂しそうに笑っている。
何かあったのだろうか。
でもきっと、聞かない方がいいよな。
俺みたいに、死んだ親のことを聞かれて悲しい気持ちにならない人の方が多いと思う。
隼人さんの親は亡くなられたかは分からない。
けど、きっと辛いんだ。
「今は貴夜いるから全然寂しくないんだよな。1人じゃないし。俺の大事な人だ」
愛しそうに貴夜兄を見る。
隼人さんにとっても、貴夜兄は心の支えになっているんだ。
俺もたくさん支えられているから、この人にはそう言う力があるのかも知れない。
「俺にとっても、大事な人です」
俺がそう言うと、貴夜兄の耳が少し赤くなったような気がした。