第11章 番外編【おばあさんの家】
「ふふっ…」
突然笑い出したおばあさんに目をやり首をかしげる。
「あ、ごめんなさい。あまりにも貴夜くんに似てたから」
そんなこと言われたのは久しぶりだった。
いつ以来だ、小学校?
まず今の中学校に俺の兄弟の存在を知っている人がいない。
言っていないから当たり前なのだが。
「そうですかね…」
「えぇ、貴夜くんに似て男前だし、笑った時とかの顔がそっくり。性格もちょっと似てるかな」
やっぱり、兄弟や親子が似るのは当たり前で、でも本人たちはそれに気づかない。
当然俺もその中の1人だ。
多分家族皆そうだと思う。
「貴夜くんは恋愛に不器用みたいだから、もしかしたら貴方もそうかも知れないわね」
「はい………………ん?」
思わずそう呟いてしまった。
おばあさんは不思議そうな顔をしている。
いや、そんな顔をしたいのは俺なんだが。
と言うか、今おばあさん確かに『貴夜くんは恋愛に不器用みたいだから』と言った。
何故知ってるんだ?
「あ、あの、おばあさん」
「何?」
「えっと、その、おばあさんって…」
もし俺の考えていることが間違っていたらどうしよう。
きっと怒るよな、貴夜兄。
「すいません、やっぱり何でもないです」
俺は言葉を飲み込み誤魔化した。
「あらそう?…貴文くん家に戻ったら?体調悪そうだし」
確かに頭がぼーっとしてきた。
長時間直射日光の当たる場所にはどうしてもいられない。
俺は立ち上がり、おばあさんにお辞儀をして戻った。
「貴文くんお帰りー」
家の中に入ると、隼人さんだけが起きていた。
貴夜兄は寝ていると言うか、ぐったりしている。
あの後に起きたことは詮索しない様にしよう。
家の中は相変わらず涼しくて、思わずため息が出た。
隼人さんの隣に座りくつろぐ。
すると突然、隼人さんは俺に顔を近づけてきた。