第11章 番外編【おばあさんの家】
またいちゃつき始めた2人に気を遣い、俺は外に出た。
貴夜兄の、俺を引き止める声を無視して。
外に出た途端、また暑さが俺を襲う。
太陽が憎い…。
しかし、この村よく見てみるといいところだな。
自然があって、空気も美味しい。
少し都会を離れただけなのに、随分と風景が違う。
こんな田舎も、いいかも知れない。
俺は少し歩こうと思い、一本だけしかない道を歩いた。
「あ、あれは…」
おばあさんが、広い畑に腰をおろし野菜を眺めていた。
こちらに気付き、おばあさんが手招きしている。
俺は足元に気を付け、おばあさんに近づいた。
「散歩かい、貴文くん」
「え、あ、はい」
名前、覚えてる。
この短時間ですごいな。
「綺麗に育ってますね、野菜」
おばあさんの隣に腰をおろし言う。
すると嬉しそうに笑った。
「そうでしょう?昔から野菜育てるの好きでね、こうやって眺めるだけでも楽しいんだよ」
おばあさんの顔を見ていると、本当に好きなんだなと思う。
俺にはまだ、好きなコトとか無いからな。
あえて言うならば読書だ。
…好き、か。
好きな人とか、どうやったら出来るんだろう。
学校の女子たちは、皆友達みたいな感じだし。
何か、よく分からない。
「悩み事かい?」
「え…」
「浮かない顔をしていたから、そうじゃないかと思って」
優しい目で俺を見るおばあさん。
俺は目を伏せ、目の前で綺麗になっているトマトを見た。
「子どもっぽい悩みかも知れないですけど…。俺、好きな人が出来ないんです。家族皆出来てるのに、俺だけ…」
自分で言ってて何だか恥ずかしくなった。
俺が顔をうつ向かせると、おばあさんはクスクスと笑みをもらした。
「置いて行かれた感じなのね。でも、急がなくていいわよ。この先長いんだから、きっといい人とか好きな人見つかるわ。ゆっくり、探していけばいいのよ」
「…」
そうだ、俺は、何を焦っていたのだろう。
いつものマイペースで行けばいいじゃないか。
あぁ、俺ってバカだな。
俺は自嘲的に笑い、空を見上げた。
焦る必要なんかなかった。
このままでいいんだ。
こう簡単に解決してしまったのは、俺が単純だからかな。
それとも、おばあさんのおかげなのかな。
まぁ多分、どっちも、か…。