第11章 番外編【おばあさんの家】
「お前っ…あれほど口外するなって言っただろ!」
「身内のひとりやふたり知ってたっていいだろ」
「よくない!」
貴夜兄、知られるのがそんなに嫌だったのか。
まぁ確かに、男同士って言うのは簡単に言いふらしていいモノじゃないとは思うけど…。
貴夜兄はため息をつき、俺に向き直る。
「貴文、このことは絶対誰にも言うなよ、分かったな」
「う、うん…」
これで嫌だとは言えないよな。
「ねぇ皆で何話してるの?」
いづみが姫果と近づいてくる。
「な、何でもない!」
貴夜兄は「ほら遊んでやるぞー」と言って遊び始めた。
「今日は呼んでくれてありがとうね、貴文くん」
隼人さんが隣でそう言った。
俺は軽く微笑む。
「いえ。貴夜兄あぁ言ってたけど本当は嬉しいと思ってますから」
「やっぱりあいつはツンデレだな」
隼人さんは楽しそうに笑い、遊んでいる3人を見つめた。
俺にもよく分からないけど、貴夜兄は恋愛的に好きな人には素直になれないんだと思う。
まぁよくいるよな。
早く素直になればいいのにとか思うけど、実際難しいことなのかも知れない。
静かに応援してあげる方がいいかもな。
「はぁ…」
小さなため息だったが、確かに聞こえた。
朝妃…?
何だか珍しい、朝妃がため息をつくなんて。
そう言えば最近、上の空の状態が多いな。
何か考え事でもしているのだろうか。
はっ、まさか…。
「あれは、恋してる顔だな」
隼人さんがニヤニヤしながら言った。
同じこと考えてたのか。
「やっぱり、そう思います?」
あれ、ってことは、恋してないのって、俺だけ?
前にいづみも好きな人がいるってこと聞いたことがある。
姫果は鈍すぎて多分気づかないと思うが。
何だか、自分だけ置いて行かれた気がする。