【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第15章 自殺か他殺か
次に証言を聞いたのは家政婦の八重。
「昨日のパーティーの後、健二さんが悲しそうな顔をして屋敷から出ていくのを見ました。でも、30分後くらいに帰ってきました」
「行き先に心当たりはありますか?」
「多分、いつものスナックに行っていたと思います。帰ってきた後の健二さんは吹っ切れた顔して、金庫のお酒を飲んでいました」
「金庫のお酒?」
「はい、執務室にある金庫の中にお酒があるんです。それ以外のワインを飲んでいるところは私が知る限り見たことがありません」
その後、敦と香織は八重が言っていたスナックを訪れる。
「昨日?昨日はいつと通りだったわ」
スナックのママはワイングラスを洗いながら答える。
「楽しそうに飲んでたし自殺する人には思えないわ」
「そうですか」
敦はメモを取って話を聞く。
「すみません。このワインに書かれている数字は?」
多くのワインが置かれている棚を見ていた香織は一つだけ紙が貼られたワインが目に入る。
紙には4桁の数字が書かれていた。
「嗚呼、それは健二さんの奥さんの誕生日よ。あの人は大事な人が生まれた年のワインを飲むのが好きだから」
「なるほど、ありがとうございます」
最後にはおかしな証言があった。
それは渡辺健二の屋敷の向かい側に住む子供の証言だった。
「昨日の夜の雷がバーンって鳴ったから目が冷めちゃって、おじさん何してるのかなって、カーテンを開けたらおじさんの部屋に火の玉が見えたの」
「火の玉?」
「うん、ゆらゆら〜ってあっちこっちに行ってた」