【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第13章 ティーパーティー
「よく分かったな、彼は『本』の道標《タイガービートル》、そして君は世界の支配者《クイーン》として懸けさせてもらった」
「私の異能が目的で‥‥」
異能目的なら香織が異能を使えないことは知っているはずだ。
使えない駒を手元に置きたがる意味が分からない。
「君の異能−−夢の方舟は生と死を操るものだ。実際に唯斗という生命体を作り出した。」
フィッツジェラルドが香織のことをクイーンと呼ぶ理由が分かった気がする。
生と死を操るというのは世界を支配するのと同じだと思ったのだろう。
「そうですけど私は異能が使えません」
「『使いたくない』の間違いではないのか?」
「それって、どういう‥‥」
「14年前、君は異能生命体を作り出した。だしたら今も使えるはずだ。言動と合わない」
フィッツジェラルドが言うことには一理ある。
「何が言いたいのですか?」
「君が異能を使えないのは『何か』が異能を使うのを妨げていると考えられる」
「そんなことを言われても‥‥仮に使えたとして、あなたは私の異能を何に使いたいのですか?」
「娘を生き返らせりたい。それだけだ」
香織は驚いた。
初めて会った時には探偵社に脅しをかけ、ポートマフィアのビルを消した男に家族愛があったことに。
「しかし今は『本』に頼るしかない。君はいわば保険だ」
ヨコハマの何処かにある『本』を探すのは一筋縄ではいかない。
見つからない可能性が十分にある。
香織は『本』が見つからなかった時の保険として狙われたのだ。
(この人は、家族のためにここに来たんだ)
「‥‥死者を生き返られることなんて無理ですよ、それはあなただって分かるはずです」
(私だって出来ることならお母さんを生き返らせたい)
一緒に過ごした時間は短かったが香織にとって幸せだった。
戻りたいと何度も思っていた。
「あなたは少し誤解しています。私が唯斗を生命体に出来たのは重症だったから出来たんです。それを忘れないでください」