【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第12章 三社鼎立
(あの人の異能−−一度樹木と繋げれば麓の樹木を操って列車を停止出来るかもしれない。五分だけでもいい、あの人に一度も樹木に触れさせない!)
香織は2、3発ジョンの蔦を撃った。
しかし、銃を持っていた手を蔦で拘束される。
「君、こう思ったね?『お嬢さん方が逃げ切るまで僕に樹木に触れさせなければ勝ちだ』って」
「っ!?」
「戦況を簡略化しすぎると行動が単調になる。動きを読むのは訳ないよ」
「あなた、さっきこう思わなかった?『拳銃を叩き落とせばもう私に攻撃手段はない』と」
落ちていた拳銃を足を使って拘束されている腕とは反対の手で拳銃を持つ。
そして、腕を拘束している蔦を拳銃の弾で撃ち落とし、ジョンの身体に向かって撃つ。
反撃されるとは思わなかったジョンは弾を受けて、倒れ込む。
「人のこと言えないね、戦況を簡略化し過ぎると行動が単調になる」
背後に気配を感じた香織は振り向く。
そこには香織が撃ち倒したラヴクラフトがいる。
「遅いよ、ラヴクラフト!何してたの!?」
「寝てた」
つかさず香織はラヴクラフトに向けて撃つが当たっているはずなのに彼は倒れなかった。
(銃が効かない!)
ラヴクラフトから距離を取ろうとするが香織の身体が触手に掴まれる。
「さて、これで形勢逆転だ」
「くっ」
不意に脳によぎったのはナオミと春野のことだった。
二人は無事に麓まで辿り着けたのだろうか。
(私は、ここまでのようだね)
身体を拘束する触手の力が強まり、香織は意識を失った。