【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第3章 禁忌という名の罪
(あれは何!?)
息を切らしながらも後ろから追いかけてくる奴から香織は逃げる。
「っ!」
走る足が限界を迎えたようで転んでしまう。
すると体が触手らしきものに捕まり、握り締められる。
目の前にいるのは高さ4メートル程の原型を留めていない化け物だった。
「い、たい」
握り締める力が強くなり、顔を顰める。
意識朦朧としている香織の頭にはバラバラになったローマ字が浮かび上がる。
(なに‥‥この文字は‥‥)
そして香織の意識は暗闇に落ちた。
◆ ◆ ◆
パチパチと辺りが火の海になっている中、香織はそこにいた。
誰かに体を抱きかかえられている感覚がする。
(嗚呼、これは夢だ。)
それは昔の記憶。
忘れたくても忘れられない記憶。
「済まない‥‥済まない、香織。」
(父さん‥‥)
この謝る声は父だ。
久しぶりに聞く父の声に香織は懐かしみを感じた。
意識がまた闇の中に包まれてしまう。