【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第11章 たえまなく過去に押し戻されながら
翌日、朝刊や報道で騒がれた。
七階建ての建物が一夜にして消滅したのだ。
また、その建物にはポートマフィアのフロント企業が入っており、構成員の事務所として使われて居たとの情報もあった。
「メッセージ、とは此れか」
「やはり寮にも賢治君は居ませんでした」
賢治の帽子を持ちながら谷崎が社内に戻って来た。
「逆らう探偵社も用済みのマフィアも凡て消す、か」
「すみません、私が賢治君の代わりに行っていれば−−」
昇降機内で何かあったのは明白だ。
「香織の所為では無い。それに香織も探偵社の一員だ。香織しか出来ない仕事がある。あまり自分の価値を低く見るな」
「社長‥‥」
役立たずだと思っていたが役に立っていたのだ。
認められた気がして嬉しかった。
「谷崎、これ以上単独で動くな、敦と組んで賢治を探せ。太宰は俺と会議室に来い、社長会議だ」
何も言われなかった香織は通常業務だろう。
デスクに座り、仕事をする。
しかし、全く集中出来ない。
理由は分かりきっている。
賢治の安否、それと敦、ナオミ、谷崎のことが心配だ。
「あの、お姉さん」
「どうしたの?」
鏡花は黙り込んでしまう。
「もしかして、敦君達のことが心配?」
「はい‥‥」