【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第11章 たえまなく過去に押し戻されながら
「じゃあ探しに行こっか!私も心配だし」
「はいっ!」
香織は国木田の制止を聞かず、一言言ってから社を出た。
街を歩いていると大通りのほうから車のクラクションが鳴っているのが聞こえる。
それも一回だけではなく、何回も鳴っている。
大通りの交差点まで出ると、交差点のど真ん中で人々が呆然と座り込んだり、倒れこんだりしていた。
その中には敦君、さらには賢治の姿もある。
鏡花は敦の無事な姿を見つけると一目散でかけて行く。
敦は少し遠くの方で誰かに声を掛けていた。
フィッツジェラルドと共に社を訪れていた赤毛の少女だ。
彼女は敦を睨むなり瞳に涙を浮かべながら走り去る。
鏡花は敦の前に現れて抱き締めた。
「鏡花ちゃん!」
「心配した」
「ありがとう」
「それでは私達は失礼するよ、少年……どんな困難な戦局でも必ず理論的な最適解は有る、それを忘れてはいかないよ」
「はい!」
白衣を着ている男と赤いワンピースを着た女の子が立ち去る。
(あの人は!)
遠目からでも分かる。
鏡花も敦と話していた人を知っているため怯えて敦の腕を掴んでしゃがみ込む。
鏡花は荒く呼吸をしている。
「……鏡花ちゃん!?どうしたの!?」
「敦君!」
香織が慌てて敦と鏡花に駆け寄る。
敦は何が起きてるか分からなく、混乱している。
「香織さん!鏡花ちゃんが!!」
「鏡花ちゃんが怯えるのも無理はないよ、だってあの人はポートマフィア首領−−森鴎外本人だから」
(ほんの一瞬だったけど、目が合った)
去り際に目が合った。
忘れてかけていた記憶を思い出してしまう。
香織は森が立ち去った後の道を見つめる。