【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第10章 平穏じゃない日
「……目的は2つって言ってたよな?」
太宰はニヤニヤしている。
「真逆……ってことは……二番目の目的は俺に最悪な選択をさせること?」
「そ、久しぶりの再会なんだ、このくらいのサプライズは当然だよ」
微笑む太宰に、中也は膝をつく。
「人虎がどうとかの話なら芥川が仕切ってた、奴は二階の通信保管所に記録を残してる筈だ」
「どうも」
「用を済ませて消えろ」
戦意を喪失した中也は自分の外套を拾い、部屋を去ろうとする。
「それから中也、別件でもう一つ聞きたい事があるんだけど」
「あ?んだよ、まだ何かあんのか?」
「君、香織に会ったの?」
一瞬、中也の動きが止まる。
「嗚呼、そうだよ。彼奴に会った。俺がこっちに戻ってくる時に偶々見かけて本部に連れて来た。今は彼奴の部屋で眠らせてある」
「そっ、無事なら良かった」
「気をつけろ、太宰。彼奴は人虎と同じ懸賞金を懸けられてる。150億だ。しかも懸けた奴の裏には別の奴がいる。そいつの情報が一切出てこねぇ」
「忠告どーも、まだ香織のこと気にしてたんだ?」
「元々一般人の彼奴をマフィア側の世界に連れてきたのは俺等だ。巻き込まれて死んじまったら後味が悪ぃだろ」
「ふーん」
太宰は面白そうに中也を見る。
「用を済ませて消えろ」
中也が去りかける。
「そうだ、1つ訂正」
「?」
「今の私は美女との心中が夢なので君に蹴り殺されても毛ほど嬉しくない、悪いね」
「あ、そう、じゃ今度自殺希望の美人、探しといてやるよ」
太宰は中也に感動する。
「中也……君は実は良い人だったのかい?」
「早く死ねって意味だよバカヤロウ。言っておくがな、太宰、これで終わると思うなよ」
中也は振り返って太宰を指差す。
「二度目はねぇぞ」
「……違う違う、何か忘れてない?」
「……」
中也は背中を向けて屈辱に耐え、太宰はワクワクしている。
中也は覚悟を決めて振り返り内股で。
「二度目はなくってよ!」
膝から崩れ落ちる太宰であった。