【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第10章 平穏じゃない日
「……くくっ」
「……何がおかしい」
「いいことを教えよう、明日、五大幹部会がある」
「莫迦な、あるならとっくに連絡が……」
「……」
「君は私を殺さない、それどころか懸賞金の払い主に関する情報の在処を教えたうえで、この部屋を出て行く。それも、内股歩きのお嬢様口調でね」
「はぁ?」
「組織上層部にある手紙を送った」
「手紙?」
「内容はこうだ。『太宰死歿せしむる時、汝らのあらゆる秘匿、公にならん』」
「……?」
「噛み砕いて言うと、太宰が殺されたら組織の秘密が全部バラされるよってとこかな」
中也の携帯が鳴る。
中也は太宰から離れ、太宰を睨みつつ、横目でメールを確認する。
太宰は楽しそうに微笑む。
「緊急招集のお知らせかな?」
「真逆手前……」
「検事局に渡ればマフィア幹部全員百回は死刑に出来る情報だよ、緊急幹部会議が開かれるに値するね」
「そんな脅しに日和るほどマフィアは温くねぇ、手前は死ぬ」
「けどそれは幹部会の決定事項だ。決定より前に私を殺したら……君は罷免か、最悪処刑だ」
「……俺が諸々の柵を振り切って、形付り構わず殺したとしても……手前は死ねて喜ぶだけ……か」
「ってことで、やりたきゃどーーぞ」
「……」
「ほら早く、まーだーかーなー」
中也は怒り震えながらも、ナイフを捨てる。
「何だ、やめるの?私の所為で組織を追わせる中也ってのも素敵だったのに」
「くそ……」
中也はハッとする。