【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第10章 平穏じゃない日
依頼された仕事を終えた香織は帰りにゆらゆらと電車に揺らされながら乗っている。
(マフィアに襲撃されたって聞いたけど大丈夫かな?)
香織が別の依頼に行っている間に依頼があったそうで、その依頼を仕組んだのはマフィアだったらしい。
谷崎と敦が重症を負ったと国木田から聞いているため、香織は心配だ。
(与謝野さんに解体されてただろうなぁ)
女医である与謝野晶子の異能は、あらゆる外傷を治癒させるものだ。
ただしそれは瀕死の状態に限る。
(ご愁傷さま。敦君、谷崎君)
香織は与謝野の治療を受けたことは無いが、他の社員が治療を受けている場面は見たことがある。
治療を受けた後の社員の顔は死んでいた。
「あ〜こちら車掌室ぅ」
アナウスが流れ、香織は耳を傾ける。
「誠に勝手ながらぁ?唯今よりささやかな『物質科学実験』を行いまぁす!」
「物理学実験」などと電車内アナウンスが流れたと思ったら、前方車両が爆発した。
(何が起きてるの!?)
「今ので2、3人は死んだかなぁ〜?でも次はこんなモンじゃありません!皆様が月まで飛べる量の爆弾が先頭と最後尾に仕掛けられておりまぁす!」
香織が乗っているのは4両目。
先に先頭車両にいるはずの実行犯の方に行くかと座席を立つと次のアナウンスが流れる。
「さてさて、被験者代表敦くん!君が首を差し出さないと、乗客全員天国に行っちゃうぞぉ〜〜?」
(え、敦君乗ってるの!?)
後ろから聴きなれたハイヒールの足音が聞こえ、振り向くと与謝野が歩いてきた。
「おや、香織じゃないかい?何してんだい、こんなとこで」
「与謝野さんも!?あの、先頭車両に行くんですか?」
「嗚呼、後部には敦が行ってる。アンタは怪我人の応急処置を頼む。爆弾魔は妾に任せな、応急処置が終ったらすぐ後部へ向かうんだ。いいね?」
「はい!」
与謝野と別れ、応急処置をし始めたてすぐにまた爆発音が聞こえる。
しばらくすると応急処置は落ち着く。
敦のいる後部車両へ向かっている時、車両から女の子が落ちる。
女の子には爆弾がついていて、敦は虎化して電車から飛び出し、女の子に付いていた爆弾を引きちぎり空へと投げる。
数秒で爆弾は爆発して、二人が落ちていくのが見える。
「敦君!」