【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第8章 月下の少年
ガツガツと茶漬けを頬張る敦の横で、香織は呆れ顔で見つめていた。
(これで何杯目?)
「おい太宰。早く仕事に戻るぞ」
香織の向かい側に座る国木田が大切な手帖をめくりながら言った。
「国木田君は予定表が好きだねぇ」
無関心な顔で答える太宰に、国木田君は手帖を閉じて机に勢いよく置いた。
「これは予定表では無い!理想だ!我が人生の道標だ。
そしてここには"仕事の相方が自殺嗜癖”とは書いてない」
その後、口に食べ物を含みながら話し、何を言っているか理解出来ない敦と国木田の会話があった。
「二人ともどうして会話出来るの?」
その光景に香織は呆れ顔で呟いた。
そんな事をしていても、丼が山になる程の茶漬けを平らげていた。
「はー食った!もう茶漬けは十年は見たくない!」
満足そうにお腹を撫でる敦。
「すみませーん。私も茶漬け下さーい」
余りにも美味しそうに茶漬けを食べる敦を見ていると、お腹が空いてしまった。
「お前まで…」
国木田君が頭を抱える。
「流石に、自分で食べたものは自分で払います」
そう言って運ばれて来た茶漬けを香織は頬張り始めた。
「え!?国木田君、香織にお金を払わせるのかい!?」
信じられなーいと太宰が大袈裟に驚く素振りを見せる。
「五月蝿い、太宰。おい如月、伝票此処に入れておけ」
「やったー!ありがと、国木田さん♪」
国木田は苛立ちを見せながら眼鏡の位置を指で直した。
「ほんっとーに助かりました!孤児院を追い出され食べるものも、寝るところもなく、あわや斃死かと」
「ふーん。君、施設の出かい?」
敦が切り出した話に太宰が尋ねた。