【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第2章 出逢いは突然で
「よろしくね。」
太宰治−−−もとい太宰君は無論、私の席の隣になった。
そして彼は先程のように女子たちの虜にした笑みを私に向けた。
「よろしくおねがいします。」
スッと彼から目をそらした。
そうしないと今感じている女子たちの妬む視線が怖いからだ。
自分も女子だが女って怖いと身を持って感じた。
「転校生の挨拶も終わったことだし出席取るぞ〜」
出席簿を開いた小黒先生が生徒の名前を読み上げる。
「花園朱美」
「はい!」
友人の名前が呼ばれる。
私はまだ後のほうだ。
「柳瀬香織」
「はい」
私の名前は柳瀬香織。
朱美と一緒の教会に住む、普通の高校生だ。
ホームルームが終わり、一限目の授業の準備をしていると隣の太宰君が話しかけて来た。
「香織ちゃんの通学路って学校近くの角を通って登校してるでじょ?」
「そうですけど‥‥」
鞄から教科書を取って、机の上に重ねる。
「朝、ぶつかりかけなかった?」
動かしている手を止めてしまう。
何故知っているのか、どっかで見ていたのか。
真逆‥‥
「あの時の人、太宰君だった?」
「そうだとも!」
よりにもよってぶつかりかけた相手が太宰君だったとは‥‥ほとんど少女マンガの展開と同じではないか。
別に太宰君を毛嫌いしている訳ではない、言葉で表すのが難しいが彼には化けの皮が張り付いているように見える。
今ここで猫かぶってるよね的なことを言っても彼は正直に答える性格ではないのは初対面で分かる。
ましてやあったとしても彼は口が堅いだろうしこっちも探る気はない。
口は災の元というのはこの時に使うのだと思った。
「あの時はほんとに‥‥‥」
再び謝ろうとしたが邪魔された。