【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第32章 定められしサークリファイス
それから一ヶ月後。
探偵社の社長室には、重苦しい空気が流れていた。
大きなデスクの奥で、福沢は険しい顔をしながら両手を組んで机に肘をつき、鋭い眼差しで目の前の二人を見据えている。
その視線の先には、静かに立つ香織と太宰が並んでいた。
香織は背筋をぴんと伸ばし、太宰はどこか楽しげに口角を上げていた。
「フョードルは世界に混乱を招き、シグマはカジノを使って硬貨爆弾を各国に撒こうとした。それは由々しきことだ」
福沢は低く言葉を吐き出し、机を指先で軽く叩く。
「それを踏まえて今何と?」
一瞬の沈黙。
香織は小さく息を吸い、視線を福沢に真っ直ぐ合わせた。
「シグマと」
太宰が肩をすくめ、目を細めながら口を開く。
「フョードル・ドストエフスキーを」
香織が一歩前に出て、指をきゅっと組み直す。
「「探偵社員に推薦します」」
二人の声が重なり、はっきりと言葉を口にする。