【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第5章 母が遺したもの
目を開けると、見慣れた天井だった。
「よう、起きたか」
「中也君‥‥」
ベッドの横には中也の姿がいる。
「太宰と迎えに行ったら手前が気を失って、ここに運んだ」
「ありがと、中也君には迷惑かけてばかりだね」
「迷惑なんて思ってねぇよ」
香織は身体を起こし、立ち上がる。
「まだ寝てなくていいのかよ?」
「思い出したの、全部‥‥森さんに会わないといけない。一緒に来てくれる?」
勿論だとでも言うように中也は頷く。
◆ ◆ ◆
「失礼します」
香織より先に太宰がいた。
森と何か話していたのだろう。
「おや?まだ寝てなくていいのかい?」
「大丈夫です。あの、話終わっていないのならまた時間を改めて−−」
「あ、いいのだよ。話は終わったから…‥それで?私に何か用があるのだろう?」
「はい、私‥‥全部記憶を思い出しました」
森は黙って香織の話を聞く。
「知っていたんですね、森さんは」
「嗚呼、そうだよ」
「では何で教えてくれなかったんですか?」
「香織君自身が真実を掴むべきだと思ったからだよ」
「そうですか‥‥記憶を思い出しても分からないことがあるんです。あなたは母とは一体どんな関係だったのですか?」
一拍置いて森が答える。
「彼女−−如月彩愛さんとは昔馴染みなのだよ、それに幼い君と彩愛さんが住んでいた街で医者をしていたから面識があった」
「詳しいことはこの書類に書いてある」
渡された書類に目を通すと、香織は驚いた。
「母さんは‥‥先代首領の娘?」
つまり先代首領は香織からすると祖父にあたることになる。
「その通りだ」