【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第5章 母が遺したもの
「いのう?封じる?」
この時の私は言葉の意味を知らなかった。
無知は罪だと思う。
「あなたの、異能は−−"十六桜”。生命を新たに作り出し、生命を終わらせる異能よ」
そう言って母さんは死んだ。
その後、私は柳瀬和雄に保護されて、彼の研究所に入れられた。
多分、母さんを殺した男は柳瀬和雄が雇った人じゃないかと私は思う。
そして、研究所に入れられた私は唯斗に会った。
唯斗が言っていたあの日、確かに侵入者が研究所に入ってきた。
サイレンが響き渡る中、私と唯斗は逃げていた。
「早く!」
前から銃声が聞こえ、走っている足を止める。
角から覗いてみると、警備隊に囲まれている男2人がいた。
交戦中で、あの先には出口があったはずだ。
「戦っている最中だし今が好機じゃない?」
意を決して私と唯斗は角から出ると、流れ弾に唯斗が撃たれた。
「唯斗!」
「香織、君だけでも‥‥」
「嫌だ!何で!?どうして!?」
私達は生きるためにここから出たかった。
それなのに、何でこんな目に遭うのだろう。
当たりどころが悪く、唯斗の血の量からして数分後には失血死をするのは間違いないだろう。
「嫌だよ、唯斗が死ぬのは」
「香織‥‥」
「私には唯斗が必要なの!」
香織の身体が光ったのと同時に爆発音がした。
香織は意識を失い、気付くとそこは夢で見た通りの景色−−炎の中で香織の身体を抱きしめながら謝る和雄の姿。
(これが、真実‥‥)