【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第31章 Final Stage Ⅳ 〜絶望の先に咲く香りの花〜
「あれ、動ける」
金髪の少女は自分の手のひらを広げて、驚いたようにぱちぱちと瞬きを繰り返した。
「私が二人を人間にしました。剣だと今回のように悪用されるので」
アナスタシアは微笑んで二人に近づき、そっと肩に手を置く。
「それで、私達は何を?」
金髪の少女がアナスタシアを見上げた。
「基本的に自由に過ごしてもらって構いません。あ、でも、そこにいる若姫の力になってくれると助かります」
「分かった」
「うん」
雨御前と聖十剣は互いに顔を見合わせ、小さく頷くと香織に笑いかけた。
「これからよろしくね、主様」
「よ、よろしく‥‥お願いします」
「うん、よろしく」
香織は二人の手をそっと握って応える。
「さてと、初めましょうか」
アナスタシアが片手を宙に掲げると、淡い光が指先から溢れる。
「罪人、フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーと福地桜痴を『世界の理を捻じ曲げた罪』として、『サンクチュアリ・ザ・ワールド』に拘留させる」
彼女の声が低く、静かに響き渡る。
「執行人、『四賢者』No.2 アナスタシア・ドストエフスカヤ・グラナートが行う」
その瞬間、辺り一面が柔らかな光に包まれた。
アナスタシアの髪が光に溶けて揺れ、静かに世界の歪みが閉じていった。