【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第31章 Final Stage Ⅳ 〜絶望の先に咲く香りの花〜
「本当は異能をむしり取ってやりたいのですが異能を剥奪してしまうと異能と魂が強く結んでしまっているせいで死にます。フョードルが死ねば若姫は悲しむでしょう」
その声にフョードルは眉をひそめ、わずかに香織の方に視線を流した。
「それと、この二剣の行く末を決めなければなりませんね」
アナスタシアは地面に落ちていた聖十剣と雨御前に視線を落とし、しゃがんでそっと拾い上げる。
剣の冷たい金属の感触を掌に感じ取りながら、形を確かめるように撫でた。
「あら、『付喪神』が宿っていますね、それならこうしましょう」
アナスタシアがそっと目を閉じ、両手で二剣を胸元に抱え込むと、剣がふわりと宙に浮き上がった。
光が徐々に溢れ、眩い輝きが辺りを包む。
やがて、光の中から二人の少女が姿を現れた。
周囲の誰もが息を呑み、声を失った。
「‥‥なるほど、余程丁重に扱われたのですね」
予報外だったのか、アナスタシアは目を細める。
「まさか龍族の子が顕現するとは……」
現れた二人の少女は、人間の姿をしているが、頭には小さな角が二本ずつ生えており、腰には尻尾が揺れていた。
「あ、あの」
銀髪の少女がおずおずと自分の尻尾を掴み、オロオロと視線を泳がせる。