【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第31章 Final Stage Ⅳ 〜絶望の先に咲く香りの花〜
「ここは『文豪ストレイドッグス』という物語を弄った世界−−−この世界は原作の内容を少し変えた謂わば夢小説の世界です。ざっくり言ってしまうと本来ならばこのシーンは若姫の出番がなく、太宰と中也がフョードルに立ち向かい、最後は熱い口付けで終わる筈だったのです」
「それって……」
敦が顔をこわばらせ、無意識に後ずさる。
「本来はBL小説だった?」
香織が思わず口元を覆い、目をぱちくりとさせた。
「ええ、その通りです」
「「……」」
その場にいる人達は言葉を失ったまま硬直した。
「東雲美鈴は太宰と中也に立ちはだかる悪役令嬢的ボジション、如月香織はただのモブでした」
「まぁ、それは置いておいて問題は貴方達です」
アナスタシアの瞳が鋭く光り、扇のように広げた手をひらりと倒れている福地とフョードルに向ける。
「よくも世界をめちゃくちゃにしてくれましたね?四賢者の一人として処罰しなくてはなりません」
一転してその声には冷たい棘が混じっていた。
「罪状は……そうですね、『世界の理を捻じ曲げた罪』で、『改良の余地あり』」
アナスタシアは一歩前に進み、スカートの裾がひらりと揺れた。
「三年は私の世界---『サンクチュアリ・ザ・ワールド(聖域世界)』で自分と見つめ合うために居てもらいます。その後は私の監視下で現実世界に赴き、罪を償いながら過ごしてもらいます」
「三年も!?」
香織が思わず叫び、顔色を変える。
「これでも優遇した方なんです」
アナスタシアは香織に視線を向けて小さく肩をすくめた。