【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第31章 Final Stage Ⅳ 〜絶望の先に咲く香りの花〜
香織は異能を使うと辺り一面が真っ白に染まる。
あまりの眩しさにその場にいる人達が目を瞑る。
やがて、瞼を上げるとそこは幻想的な場所だった。
「何これ!?」
「如月さん……その姿……」
「『夢の方舟・リインフォース』」
光の柱が敦と芥川を封じ込める。
傷が癒え、身体の底から力が湧く。
「こ、これは……」
「力が湧いてくる」
「敦君、芥川君、一時的に強化させた。福地さんの相手をお願い」
「ありがとうございます。如月さん」
「人虎」
敦と芥川は目を合わせ、芥川は羅生門を敦に纏わせて、『月下獣羅生門』の姿になった。
「これで終わらせる」
敦は福地に立ち向かった。
香織はその様子を見て、フョードルの方に向く。
「これが、貴女の異能空間なのですね」
フョードルは薄く目を細め、目の前の光景を一瞥すると、静かに口角を上げる。
「殺さないのですか?」
香織は拳を強く握りしめ、白い息を吐くように言った。
「私はあなたを殺す気はありませんし、傷付ける気もありません。私が人を殺せないこと、分かっていますよね?」
フョードルはわずかに肩をすくめて、首を傾けながら微笑む。
「もうやめましょうよ、私を恨むならまだいい、あなたの大切な人を殺したようなものですから」
「僕がいつ、貴方を恨んでいると言ったのですか?」
「え………」
香織の瞳が揺れる。
「貴女はリリーを殺していません。それに娘を恨む父親がどこにいるのですか」
「……やっぱり」
香織は掠れた声で笑みを作るが、その目は涙で滲む。