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【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜

第31章 Final Stage Ⅳ 〜絶望の先に咲く香りの花〜







(これが私の力‥‥ナーシャさん、私はこんなにも戦えるんだね)

香織は小さく息を吐き、わずかに震える指先を見つめる。
指先から零れた微かな光が、冷たい空気に滲んだ。
福地が無言のまま刃を振りかざし、香織に迫る。
切っ先に纏う冷たい殺気が肌を切り裂くように近づいてくる。

「雨御前で過去を斬るつもりですか」

香織は視線を逸らさず、一歩踏み込んだ。
その瞬間、福地の手から雨御前と聖十字剣が音もなく掻き消える。
香織は静かに手を掲げる。
握られていたのは、今しがたまで福地の掌にあったはずの二振りの剣。

「この二剣がなければ福地さんは何も出来ない」

小さく、しかしはっきりとした声で言い切ると、香織は剣をゆっくりと地面に投げ捨てた。
福地の視線を無視して、香織はゆっくりと顔を上げ、フョードルを真っ直ぐに見据える。
その瞳には恐怖よりも深い決意が宿っている。

「私はあなたに勝つことは出来ない」

小さく首を振りながら、拳をぎゅっと握りしめる。

「あなたに本気を出されたらどうしようも出来ない。だからあなたから諦めてもらうことしかない」

言葉の合間に、香織の口元に僅かな笑みが浮かぶ。

(これが、私が描くハッピーエンドへの道だ)

「さぁ、物語を綴ろう」

香織は片手を胸元に添え、もう一方の手を静かに広げる。
指先から白い光が生まれ、空間に滲み、幻想のように揺らめく。

「あるものをないものにないものをあるものに、異能力『夢の方舟・ファクトコンヴァージョン』(事実変換)」

声は静かで世界に刻むように響いた。
光が舞い、香織の周囲に物語の一節のように小さな文字の残滓が漂い始める。




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