【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第31章 Final Stage Ⅳ 〜絶望の先に咲く香りの花〜
「は、はぁ‥‥それならあなたは私に何をしてくれるの?」
香織は息を整えながら問い詰めるように一歩前に出る。
「このタイミングで私の前に現れたという事に何か意味はあるよね?私が危険だった場面はあった。でも、今出て来た意味を知りたい」
揺れる声に、握った拳がわずかに震える。
「若姫が危険だから出て来たのではありませんよ」
アナスタシアは小さく首を振る。
「初めて私の異能を使ったのでご挨拶を」
そう言って、ふわりと広がった袖口から白い指が覗き、そっと香織の肩に触れる。
「あとは覚醒時は意識を私に譲渡するか否か問います。己の価値観や想像力で敵わない相手に私に全て任せてしまうのも手です」
香織は肩に触れた手にちらりと目を落とし、小さく眉をひそめた。
「じゃあ覚醒で私の意識の時、何が変わるの?」
言葉を吐き出すようにして、顔を上げて真っ直ぐ見つめ返す。
「ゲームで言うフィーバータイムです。ただし覚醒モードをやれば当分は力が使えません。そうならないためにも異能を身体に慣らしていきましょうね」
「それで、若姫は何を求めるのですか?」
片手を広げ、すっと香織へ向ける。
光の粒がその手のひらに集まって揺れる。
「私に想像力を‥‥私自身の力でフェージャと決着をつけたい」
香織は小さく息を呑み、胸に手を当てる。
「分かりました」
差し出した手を香織の額にそっと触れさせる。
「若姫の頭にイマジネーションを与えましょう。健闘を祈っています」
指先から静かな光が流れ込む。
アナスタシアは瞼を閉じ、声を柔らかく響かせた。