【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第31章 Final Stage Ⅳ 〜絶望の先に咲く香りの花〜
「おや、今日は随分と積極的ですね」
フョードルは口元に薄く笑みを浮かべる。
「あなたと話に来ました」
香織はフョードルを真っ直ぐ睨みつけ、拳をぎゅっと握りしめる。
「話とは?」
フョードルは首をかしげ、小さく肩をすくめて見せる。
「目的が果たされてもお母さんは帰ってきません」
香織の声はわずかに震え、視線が一瞬だけ伏せられるが、すぐに鋭くフョードルを射抜く。
「僕を説得する気ですか、そんなことをしている暇はあるのですか?お仲間が大変なことになっていますよ」
香織もつられるようにフョードルの視線を辿り、地面に膝をついている芥川と敦の姿を認める。
少し離れた場所では美鈴が福地と激しく斬り結んでいる。
「くっ」
香織は唇を噛み、肩を震わせながら歯を食いしばる
「あなたは……どこまで……」
声を絞り出す香織の前で、フョードルは歩み寄りながら人差し指を立て、口元に当てる。
「少しの間、眠ってください。全てが終わったら起こしてあげます」
フョードルは囁くように言うと、香織のすぐ目前まで近づき、手をそっと頬に触れる。
「なっ!!」
香織が目を見開く間もなく、フョードルの指先が首筋に触れた瞬間、彼女の意識は暗闇に落ちる。
倒れかける香織の身体をフョードルは片手で支え、そっと地面に横たえる。