【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第30章 Final Stage Ⅲ 〜宿命の斬光、桜は血に咲く〜
「福地さんの異能と美鈴ちゃんでは相性が悪い」
美鈴の桜は刃のように鋭く、防御も出来る。
しかし、花弁を斬ってしまえばそれはただの紙切れと同然だ。
「そうか、彼奴は初手でそれを見切っていたのね」
「『武器の性能を百倍にする』‥‥防御なんて、紙一重で切り裂かれるだけ」
芥川と敦が交戦している最中も、福地は常に周囲を観察していた。
そして、最も厄介な援護−−−美鈴を確実に排除しようとしていたのだ。
美鈴は唇を噛みながら、香織を見上げる。
「香織、私は援護に回る。だけど、あんたはどうするの? 福地も危険なのに」
香織は短く息を吐き、目線を遠くに向ける。
その先には廃墟の影に潜むフョードルが仄暗い瞳でこちらを見ていた。
「私は……フェージャを相手にする」
「はぁ!? 馬鹿なの!? あの魔人を相手に!」
美鈴の声は叫びに変わった。
誰よりもその異常性を知る彼女が、声を荒げるのも無理はない。
だが香織は、はっきりと頷いた。
「大丈夫、異能は物理的なものじゃないと思う」
香織の声音は静かだった。
「私はあの人との因縁に、決着をつける」
その目には、迷いがない。
深く一息吐き、フョードルの元へと歩を進める。
決着の刻が、近づいていた。