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【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜

第30章 Final Stage Ⅲ 〜宿命の斬光、桜は血に咲く〜







「貴女が自分を知りたければ、真実を受け入れる覚悟を持ちなさい」

「ねぇ、私の存在を忘れられたら−−−悲しいわね?」

艶やかな声が空を裂いた瞬間、紅の桜が奔るように咲き乱れ、花弁が鋭利な刃となってフョードルに襲いかかる。
彼女の視線は鋭く、風に揺れる髪の向こうに冷ややかな怒気が滲んでいた。

「っ!!」

異能の直前に、福地が一歩、フョードルの前に滑り込むようにして立った。
彼の剣がひと閃、桜の花弁をことごとく弾き返していく。
フョードルは一歩も動かず、ただ微笑していた。

「敦、戦えるなら貴方も応戦しなさい。いつまでそこに座り込んでいるつもり?」

美鈴は背後にいた敦に声を飛ばす。
その目は厳しく、それでいて信頼の色を帯びている。

「で、でも! 相手は、あの福地ですよ! あの人に勝てるわけ−−−」

「だから何?」

冷たく切り捨てるような言葉に、敦がはっと顔を上げた。

「貴方も見たでしょう、転移石は使えない。ここから逃げる手段は、もう戦うことだけよ」

美鈴の声は強く、揺るがなかった。
その覚悟が、敦の胸に火を点ける。

「……はい!」

敦は立ち上がり、拳を握りしめる。
その刹那、突如として黒い影が福地に襲いかかる。

「『羅生門』」

鋭利な黒の獣が、背後から福地を襲う。
福地は一瞬だけ顔を横に向け、即座に剣でその牙を弾いた。
その攻撃の鋭さに、美鈴も敦も思わず目を見張る。

「今のは……羅生門!?」

敦がその方向に視線を向ける。
瓦礫の陰から歩み出てきたのは−−−

「芥川君!?」

そこに立っていたのは、確かに芥川龍之介だった。
だがその姿は、明らかにいつもの彼ではない。




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