【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第30章 Final Stage Ⅲ 〜宿命の斬光、桜は血に咲く〜
「だが、あれは私達はドストエフスキーの異能の発動条件が『触れる事』かもしれないと警戒し、作戦を遠隔中心に立てた。ヘリを落とし、『触れずに倒す』事にしたのもその為、なら本当の発動条件は何だ?」
太宰は一歩、また一歩と足音を響かせながら思考を巡らせる。
何かに気付いた瞬間、太宰は焦ったように走り出す。
「あ!おい!!どこ行きやがるポンツク!」
中也が慌てて太宰の後を追う。
「ドストエフスキーの死体を確認する!」
振り向きもせずに声だけを投げ、太宰は廊下を駆け抜ける。
瓦礫の崩れた部屋に着くと、太宰は息を切らせながら崩れた壁を手で払い、瓦礫を乱暴に掴んで放り投げる。
「く‥‥!」
両手に埃と血をつけながら、必死にフョードルの死体を引きずり出す。
「珍しいぜ、太宰が汗なんか流してやがる」
中也が肩を竦めて苦笑し、足で落ちてきた瓦礫を脇へ蹴り飛ばす。
何とか全身を引き出した死体は、うつ伏せのまま床に転がる。
太宰は膝をついて息を荒げ、ぐっと死体の肩を掴む。
「ほらな、やっぱり死んでたろ」
当たり前だとでも言うように中也が鼻で笑う。
「そうか?」
太宰は血と埃のついた指でぐいっと死体の顎を押し、顔をこちらに向ける。
「こいつは誰だ?」
晒されたその顔はフョードルではなく、全く見覚えのない男のものだった。